病院生活7〜9日目
この病院の退院の日がやってきた。
点滴はもうない。
食事も消化に負担が少ない病院食を食べられるようになった。
自分では入院前ぐらいの体調に戻れたんではないかと信じている。
流石に9日間もいると、愛着というか住処に近い感覚が病床に沸いていた。
自分の荷物を整理し、久しぶりの私服に着替えて両親を待つ。
この病院を退院して、受け入れ先のZ病院のベッドが空くまで親元で過ごす事になっている。
両親の2人は昼前にやってきた。
海外旅行の様な大きなキャリーバックを持った、病院に似つかわしない格好につい笑ってしまった。
退院の手続きと費用の支払いを済ませた。9日間の入院で十万円を超えた金額であったが、私にはその値段が高いかどうかも分からない。
命の値段を誰が決めるのだろう?
病院から一人暮らしをしていた自宅までタクシーで移動した。
久しぶりの外の世界は、明るく、変化に富み、そこで生きる人びとの元気な姿がどこか羨ましく思える。
戻った自宅は、両親が整頓してくれていて小綺麗だった。
「私たちが来た時はひどく散らかっていて、アナタが苦しんでもがいた姿が目に浮かんだわ」
母のその言葉は私が救急車を呼んだあの夜を思い出させた。
生きていた良かった。
この言葉にこんな実感をこめた事はない。
まだ生きている、その価値を私は愛おしく思う。
いくつかの荷物を持ち、私は親元の家へ移った。これからは入院を待つ日々が始まる。